短歌人 8月号 掲載歌

   

     尺取虫

  雨の日の四月の雨の若葉雨ひとつ期待に応へられずに

  じたばたのけふこのごろを貫きて「一回休み」のやうな青空

  朝日浴び靴音高くゆきゆくはわがことにしてふといぶかしき

  一山を当てつとばかり尺取虫が草生に寝ねし夫にのぼり来

  全長をまこと測るか尺取虫はしばし見をれば脛よりはらふ

  柿若葉の重なるところひつそりと花抱きて花落として一(ひと)木

  見るたびに爪はのびをり時間といふそこはかとなき親しきものよ

尺取虫をご存知ですか。

思わず見とれてしまうような進み方です。

  しとしとと尺取虫に全身を測らるれば死ぬといふいひつたへ

こどもの時に聞いたりしませんでしたか?